毎年、年末年始の時期になるとサービス業を中心に「年末年始も営業するので、出勤者には特別手当を出す」という会社様は多いかと思います。いわゆる「年末年始手当」です。
金額感としては、就業規則(賃金規程)に「1日2,000円」「1日3,000円」といった形で定め、給与明細では通常給与に加算して支給しているケースを、これまで何度も見てきました。
そして、この年末年始手当こそが、企業様も我々社労士も長年苦しんできた「ややこしい手当」の代表格だったように思います。
今回は、2026年2月に日本年金機構が示した考え方を踏まえ、年末年始手当の「賞与扱い/報酬扱い」について整理してみます。
これまで年末年始手当が「賞与」だった理由
年末年始手当は、実務上は給与明細で加算して支給されることが多いのですが、社会保険の世界では別の論点がありました。
簡単に言えば、年に数回(年3回以下)しか支給されない手当は、報酬ではなく賞与として扱われることがある、という点です。
年末年始手当は、12月分で1回、1月分で1回…と年間2回になりやすいため、金額が少額でも「賞与支払届が必要」と判断されるリスクがありました。
実際、年金事務所調査(いわゆる事業所調査)でも、年末年始手当や大入り手当のような年1〜2回の支給が指摘されやすいです。遡って3年分の賞与支払届を提出/社会保険料の対応発生を未然に防ぐために早期是正をおすすめしてきた、という背景があります。
2025年の労務審査で起きた「いつも通りではない話」
2025年後半、とある企業様の労務審査プロジェクトに携わったときのことです。
こちらの企業様の賃金規程には、次のように書かれていました。
「年末年始手当は、12月30日から1月3日までの5日間に勤務した場合、1日あたり2,500円を支給する」
また、賃金台帳上も、別途社会保険料を徴収することなく12月分給与に2,500~5,000円支給、1月分給与に~7,500円支給とされておりました。
私はいつも通り「これは賞与扱いだろう」と考え、念のため管轄の年金事務所に確認したところ、やはり「賞与支払届ですね」という回答でした。そこで企業様への提案書にもその旨を記載しました。
ところが年が明けてから、企業側より「管轄の年金事務所に、規程での取扱いや手当の支給方法を説明したところ、賞与ではなく現行の社会保険料控除方法を継続するよう指示がございました」と案内された、との連絡が入ったのです。
これまでのセオリーを覆すお返事に驚き年金事務所側へ確認したところ、「休日勤務手当などと分けて支給されていても、世間一般が休日での出勤をしたことにより支払われる趣旨のものとして就業規則で定められている場合は、その金額が休日出勤手当等と大きく差がないのであれば、賞与ではなく通常の報酬(給与)としてよい、と年明けの2026年1月9日に、日本年金機構から全国の年金事務所へ正式指示があったのですよ」と回答をいただきました。
日本年金機構の指示により何が変わったのか
ちょうど同じ時期に、日本年金機構の「主な疑義照会と回答」が2026年2月10日付で更新され、その中に「年末年始手当が賞与に該当するか」に関しての回答がアップされていました。
ポイントはシンプルで、考え方は次の通りです。
- 事業所の休日(年末年始等)に出勤したことに対して支給される手当であること
- 通常の休日出勤手当と比べて、金額や計算方法に著しい差がないこと
- 上記を満たす場合は、原則として「通常の報酬」として扱い賞与支払届は不要
- ただし、判断は名称ではなく、支給趣旨・金額水準・計算方法等を踏まえて総合判断する
これまで「年末年始手当=賞与扱い」と機械的に言われがちだったところに、明確な整理が入った印象です。
「賞与支払届が不要」になりやすい例
実務で多いのは、次のようなパターンです。
- 年末年始の出勤確保を目的とした手当(出勤したことの対価)
- 計算方法が休日出勤手当と近い(例:時間単価×一定割合、または日額加算)
- 金額水準も休日出勤手当と比べて極端に高くない
この場合、今回の整理に照らすと「通常の報酬」として扱える可能性が高くなります。
賞与扱いになる可能性が残るケース
逆に、次のような場合は「賞与扱い」の余地が残ります。
- 休日出勤手当とは別物として、金額が突出して大きい
- 出勤の実態と連動せず、定額・一律で支給される
- 支給趣旨が曖昧で、賃金規程と運用が噛み合っていない
今回の整理でも「名称に捉われず総合判断」とされているため、規程と運用の整合性がより重要になった、と言えるでしょう。
まとめ
年末年始手当は、長年「賞与扱い」とされがちで、企業側も社労士側も(そして年金事務所側も)事務負担を抱えてきた手当でした。
しかし2026年2月10日付の整理により、通常の休日出勤手当と同程度であれば“通常の報酬”として扱えるという考え方が明確になりました。
とはいえ、最終的には「支給趣旨」「金額」「計算方法」「規程と運用の整合性」を見て総合判断となりますので、賃金規程と実際の支給方法を一度棚卸ししておくことをおすすめします。
弊事務所では、労務監査・労務デューデリジェンスの中で、こうした「手当の論点(社会保険の取扱いを含む)」も実務目線で確認し、将来の指摘・遡及リスクを減らすご支援を行っています。気になる点があれば、お気軽にご相談ください。


